グラン・トリノ
元軍人で戦争を経験したウォルトは、妻に先立たれ所在なげな日々を送る。近所に住むのは移民ばかりとなり、以前から交流を拒んでいた。そんな折、愛車が盗まれそうになり、犯人は隣に住む少年だった。その一件以来、彼は少年とその家族に心を通わすようになる。
妻に先立たれ息子たちとは疎遠、目的を失った男が主人公である。強いアメリカとともに生きてきた彼は、もはや老人。頑固で偏屈、今どきの若者の態度を訝る。時代に取り残された昔堅気のカウボーイのようだ。
そしてタイトルのグラン・トリノとは、72年製のヴィンテージ・カー。ウォルトが自動車工だったころ自ら手掛けた車だという。大切に磨き上げた宝物だ。もっぱら眺めるだけで、ガレージからも出ていないのが意味深かも。時代は移っても、変わらない彼の人生に重なって見える。劇中の車は1年間しか造られていないらしく、今ではアメリカンなルックスが希少な存在である。そのあたりタイトルに込められた想いが読み取れそうだ。
物語は、この車が縁になって隣に住む少年と思わぬ交流が始まる。タオは不良たちにそそのかされ車を盗みに入ったわけだが、あえなく撃退される。不良たちも一喝されてしまった。後日お詫びに訪れたタオは仕事を手伝うと言いだし、近所の人たちからはお礼が届けられた。毛嫌いしていたはずの隣人たちとの交流が、乾いた心を和ませる。そして将来の希望さえ持てない少年に、一人前の男になるための秘訣を教え始めた。それは息子に伝えられなかったことだろう。
しかし、平穏な日々を壊すのはギャング気どりの不良たち。讐激をうけてタオの家族が脅かされる事態に、ウォルトは怒りを爆発させる。以前なら気にも留めなかったはず、まして危険な相手には銃を向けていたはずだが、そのケジメの付け方が意外だった。ウォルトも変わったのである。
大きく時代は変わっても、変わらない者、変わってゆく者の対比が面白い。そのなかで、古いアメリカそのもののウォルトがカッコいいではないか。何か言いたげに見えるのだが、古き良き時代のアイデンティティー、失われつつある現代を揶揄しているのだろうか。まったく、イカした爺さんである。 ┐(´-`)┌
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